塾の広報はAIで内製化できるか? 「つくる作業」と「選ばれる理由」を分けて考える
チラシやバナーは、AIを使えば社内でもつくれるようになりました。費用も時間も大きく減らせる、心強い変化です。ただし、AIがつくれるのは広報物の「形」です。「なぜ、この塾なのか」という選ばれる理由までは、AIは用意してくれません。塾の広報をAIで内製化するときは、AIに任せる作業と、塾が自分たちで持っておくべき芯を分けて考えることが大切です。
この記事では、AIで広報物をつくる時代に塾の広報で起こりやすいことと、内製化を進める前に決めておきたいことをご紹介します。
AIで、広報物は社内でつくれるようになった
画像を生成するAIや、デザインのテンプレートを備えたツールを使えば、講習の告知バナーも、体験会のチラシも、短い時間で形になります。これまで外部に依頼していた制作物を、塾の中でつくれるようになりました。
「もう外注しなくても、社内でつくれるのでは」。そう考えるのは自然なことです。急ぎの告知にすぐ対応できる。細かな修正を何度でもできる。費用を別の取り組みに回せる。内製化には、たしかな良さがあります。私たち自身も、日々の制作や自社メディアの運営にAIを使っています。
内製化したあとに、起こりやすいこと
一方で、AIで広報物をつくるようになったときに、起こりやすいことがあります。
広報物どうしが、似てくる
AIは、たくさんの事例から学んだ、多くの人にとって自然な表現を出すのが得意です。それは裏を返すと、同じような道具を使えば、色づかい、構図、言葉づかいが近づきやすいということでもあります。
多くの塾が同じようにAIを使えば、保護者の目に触れる広報物は、少しずつ似てきます。見た目は整っていても、どの塾のものか見分けがつきにくい。見分けがつかないとき、保護者が比べるのは、料金や通いやすさといった、並べて比べやすい条件になりがちです。
つくる作業が、担当者に集まる
「AIでできるから、つくっておいて」。そうお願いされた担当者は、本来の仕事を抱えながら、AIへの指示や細かな修正を重ねることになります。つくる時間は短くなっても、「これで良いのか」を判断する負担は残ります。判断の基準がなければ、担当者が変わるたびに、塾の伝え方も変わっていきます。
外部に依頼していたのは、作業だけではなかった
これまで制作会社に依頼していた費用には、デザインをつくる作業の対価だけでなく、次のようなものも含まれていました。
- 何を、どの順番で、誰に伝えるかを決める判断
- 塾らしい色、言葉、写真の選び方を守る規律
- 年間を通して、伝え方を一貫させる管理
AIによって、「つくる作業」は社内に移せるようになりました。ただ、判断・規律・管理は、AIを導入しても自動では手に入りません。内製化を進めるときは、これらを誰が担うのかを決めておくことが大切です。
AIに任せること、塾が持っておくこと
| AIに任せやすいこと | 塾が自分たちで持っておくこと |
|---|---|
| 告知のサイズ違い・色違いの展開 | 何をもって選ばれるのか(ブランドの定義) |
| 季節講習や体験会の告知の更新 | 塾の言葉づかいと、使わない言葉 |
| 文章の下書きや言い換え | 写真や色のトーン、ロゴの使い方 |
| 画像や図版の候補づくり | 何を、どの順番で、誰に伝えるか |
| 比較用の複数案のたたき台 | 反響を数字で確かめ、次に生かす仕組み |
内製化の前に、決めておきたい3つのこと
1. 選ばれる理由を、言葉にしておく
塾が届けている提供価値と、保護者・生徒が求める期待価値。その一致点を、短い言葉で定義しておきます。定義があれば、AIに何をつくらせるかの指示も、できあがったものの良し悪しの判断も、ぶれにくくなります。ブランドの定義については「塾のブランディングとは」でご紹介しています。
2. 伝え方のルールを、文書にしておく
色、書体、写真の選び方、言葉づかい、使わない表現。塾らしさのルールを文書にしておけば、担当者が変わっても伝え方は保たれます。このルールは、そのままAIへの指示としても使えます。
3. 数字で確かめる仕組みをつくっておく
つくった広報物が、どれだけ届き、反響につながったか。体験会の申込数、Webサイトの閲覧、広告の反応などを毎月確かめ、次の制作に生かします。確かめる仕組みがあれば、AIでつくったものも、外部に依頼したものも、同じ物差しで判断できます。
AIを使うほど、「定義」の価値は上がる
AIは、指示されたことを、すばやく形にします。だからこそ、何を指示するかが、これまで以上に結果を左右します。
塾の定義がはっきりしていれば、AIはその塾らしい広報物をつくる心強い道具になります。定義がないままAIを使えば、ほかの塾と似た広報物が増えていきます。同じ道具を使っていても、差は「何を伝えるか」から生まれます。
AIでは、生まれなかったもの
私たちがこれまで塾と一緒につくってきたブランドには、AIに指示するだけでは生まれなかったものがあります。
- 老舗塾ブランドの伝統をアップデートする(学習受験社ガゼット/沖縄・福岡):塾の強みと保護者の期待が重なる点を言語化し、「合格は、Gの法則で。」を開発。オリジナルのイメージモデルを軸に、SNSから駅の壁面広告まで一貫したブランド体験へ再構築しました。
- 塾の理念を、物語で伝える(久保塾/兵庫):大切にしてきた"面倒見"の姿勢から、架空の家族「久保家」と「きみと、あるく」を開発。実写撮影から、作家とのタイアップによる連載小説まで、伴走する塾の姿を物語で伝え続けています。
- 創業50年の節目を、次のブランドへ(第一ゼミナール/大阪):50年の歩みを未来への"ドア"として言語化し、ロゴ「D」と「キミと、合格をつなぐドア。」を開発。競合コンペで評価され、受注しました。
どれも、塾の歴史を聞き、先生と話し、教室を見て、保護者の期待を確かめるところから生まれました。AIは、答えを形にする作業を速くしてくれます。けれど、何を答えにするかは、塾の現場からしか見つかりません。
私たちカフーブランディングは、塾のブランドを定義し、年間の広報として動かし、数字で確かめるまでを、塾の皆さんと一緒に行っています。内製化を進めている塾には、AIに任せる部分と、塾が持っておく芯を整理するところからお手伝いします。ほかの事例は、トップページの「CASE STUDY」でご覧いただけます。
この記事は、株式会社カフーブランディングが執筆しました。調査と構成の検討にAIを活用し、内容の確認と文責は当社が持っています。
